「看護管理」Vol.12,No.4,2002年4月号
楽患ほすぴたる 患者の視点から医療サービスを提案する
第4回 病院ボランティアにしかできないこと

 以前,入院した経験があります。今は,病院でボランティアをしていますが,患者さんのためにもっと関わっていきたいと思っています。でも,具体的に何をすればよいか分かはせん。

●ボランティアにも専門性を期待!?

 あるボランティアの声です。彼女は入院経験があり,完治してからも誰かのために役に立ちたいと思い,病院でのボランティア活動を始めました。しかし,実際に患者の辛そうな顔や悩んでいる姿を見ると,本人以外は苦痛が分からないということを身をもって経験しているからこそ,何をしてあげればよいか分からなくなる,とのことでした。
「傍にいるだけでよいのだろうか」「自分も音楽を奏でるなど,何か特技があれば患者に安らぎを与えられるのではないか」。こうした悩みを病院で活動するボランティアや家族からよく聞きます。
 今回は,病院とボランティア,ボランティアと患者とがよりよい関係を築いて療養環境をよくしていくためにはどうしたらよいかということについて考えます。
 まず,病院ボランティアは主にどのような活動をしているのでしょうか。渡邉一雄氏らが1995年に行なった調査によると,外来案内55%,衛生材料作り36%,院内案内・移動介助29%,病棟までの案内18%などが上位に挙がっています。現状では,活動場所は外来だけにとどまり,活動内容の幅も限られていることが分かります1)。
 最近では,受付や案内,移送など患者に直接関わるところでは,接遇のプロといわれる百貨店の店員を多く起用したり,事椅子講習を受講した人だけに活動してもらったりと,ボランティアに専門性を期待している医瞭機関も増えています。ある病院では,ボランティアの8割以上が接遇のプロで,外来での案内を任されており,一般のボランティアはわずか1〜2割だということです。

●ボランティア・サポート講座

 楽患ねっとでは,「ボランティアをしたい。だけど具体的に何をすればよいか分からない」という人のために,また,ボランティアにしかできないことを見つけ出し,それを提供していくための技術を身につけてもらえるような講座「楽思すくーる」を開催しています。
 昨年は,川崎田園都市病院(神奈川県)で3回シリーズの「アロマテラピー講座」を開きました。アロマテラピーとは,ハーブ(薬草・香草)や果実・樹木などから採れる香り豊かな天然の精油を使用し,香りによって心と体のストレスを解放し,美容と健康に役立てていく芳香療法です。
 五感〈嗅覚・視覚・触覚・味覚・聴覚〉を使っての癒しは,人間の生理的本能,自然治癒力を引き出すといわれていますが,この講座では,それ以上にゆっくりと患者の傍にいて触れてあげることで安心感を生み,苦痛を少しでも和らげるという効果を期待しています。講座では,アロマの由来・効能,症状別での精油の使用方法を解説した後,マッサージ方法などの実技を行ないます。
 講座を受講するのはボランティアだけではありません。入院中の夫のために何かしてあげたいという老婦人が講座に訪れたこともあります。体がむくみやすいという夫のために披女は講座が終わると大の手や足のマッサージをしていました。ただ傍にいることしかできず,何もしてあげられないという罪悪感から解放され,たとえ言莱を交わすことはできなくても,マッサージを通してお互いの気持ちに触れあうことができ,心地よい一時をともに過ごせたのではないでしょうか。


●病院はボランティアに何を望む?

 患者と触れあいながら,専門職にはできない何かを具体的に提供できるということは,患者のためだけでなく,ボランティアや家族にとっても,自身の存在価値を明確にしやすく,より一層のやりがいを感じてもらえるのではないでしょうか。
 ボランティアの採用面接の際に,「何ができますか」と開くだけではなく,病院側として,ボランティアにしてもらいたいこと,ボランティアでなくてはできないことを明確にし,それを提供するために必要であれば,簡単な技術を習得してもらう講座を設けることなども今後は考えていく必要があるでしょう。
 例えば,白衣を見ると血圧が上がるが,ボランティアと話をしながらだとリラックスでき,正確な値が出やすいということで血圧測定専門のボランティアが育成され,さらに,傾聴ボランティアの講座などもできているようです。
 もちろん,ボランティアを導入する際に注意すべき点もあります。医療行為との区別をはっきりさせておくこと,思考のプライバシーを守ること,感染や事故対策などです。その一方で,ボランティアをただの労働力とみなしていないか,病院の姿勢を見直す必要もあるでしょう。
 病院ボランティアは,殺伐とした病院にゆとりや新鮮な社会の風を運んできます。病院という非日常空間に笑いをもたらし,ふっと緊張を和らげてくれる存在は日常性を与えてくれます。
 これまでの病院は治療にしか視点が置かれていなかったため,あまりにも無機質な病院が多く,思者を"癒す"という視点からの環境づくりの意識は希薄だったように思えます。今後は,治療することと同時に家族や友人とともにくつろげる場所や景色,音楽や香り,そして人と人とのコミュニケーションなどあらゆることを通して,"気持ちのよい時間・空間"を提供することが求められてくるのではないでしょうか。そのためには医療者がやるべきこと,ボランティアにしかできないことは何なのか,それぞれの病院で一度,考えて
みてはいかがですか?  (楽患ねっと/山西智香)


[引用文献]
1)渡邉一雄(編著):病院が変わる ボランティアが変える,はる書房,86−91,2001

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