| コミュニティケア,Vol.4,No.6,33号,2002.6 |
| こんな施設に行ってみたい!C 川崎田園都市病院 「お見舞いに来たくなる病院」 |
| シリーズ4回目の今回は療養型病床群の「川崎田園都市病院」を紹介します。川崎田園都市病院では多彩なボランティアを導入し、家族の足が自然に病院に向くような仕掛けづくりで「お見舞いに来たくなる病院」となっています。また、地域住民への講座の開催など、地域に開かれた病院としての取り組みも行っています。 ---------------- 「お年寄りは人生の大先輩」と言う椎名美純院長は「夢を理想に、理想を現実に」という理念のもと、川崎田園都市病院の前身である柿生病院(194床)を経営してきた。IVH、経管栄養、気管切開など医療依存度の高いお年寄りを積極的に受け入れていたため、手厚い看護を必要とする患者にとっては駆け込み寺的存在となっていた。ところが第四次医療法改正で2003年春までに、特例許可老人病院から療養型病床群への転換を迫られることになり、1ベッド当たりの面積を広げるとなると病床を減らさなくてはならないという現実に直面した。入院待ちが多い現状でベッド数を減らすことはできないと考え、昨年8月に移転新築したのが川崎田園都市病院である。 川崎田園都市病院は医療保険適用型(54床)、介護保険適用型(140床)という従来の194床に、川崎市では初めての老人性痴呆疾患療養病床111床を加えた305床を有する。 「お年寄りのためにできること、それは適切な医療を提供するだけにとどまりません。やりたくなるような楽しいリハビリ、地域との交流がある日常生活、そして家族とのコミュニケーションを絶やさないことが重要です」(椎名院長)。 今回は、地域に開かれた病院づくりやボランティアの導入、家族がお見舞いに来たくなるような病院づくりについてうかがった。 ハーブの香りがする病院 「今月のハーブティーは、カモミールとマロウです」。アロマテラピーアドバイザーの嶋本桐子さんは、お見舞いに来る家族や看護師、患者さんを対象に月に一度、院内で「アロマテラピー講座」を開催している。今年1月から始まったこの講座では、呼吸を楽にするマッサージオイルの作り方や塗り方など介護に役立つ実用的なノウハウを身につけることができる。病棟からどこからともなくハーブの香りが漂ってくる病院なんて考えただけでも心穏やかになる。足浴や、入浴時にアロマオイルを数滴たらすだけで患者さんの日常が潤い、職員にも安らぎをもたらすことになる。家族がアロマオイルを用いたマッサージを習い、病室で患者さんにマッサージすることもある。言葉だけではなく、触れ合うことによって肌のぬくもりを感じ、心のつながりを再認識することもできる。 お年寄りを入院させると、そのまま預けっぱなしにして、面会にほとんど来ない家族も少なくない。だからといってお見舞いを強要したところで長続きしないし、患者さんとの会話も弾まないだろう。川崎田園都市病院では、患者さんを預けっぱなしにするのではなく、家族がきちんとお見舞いに来ることを前提として入院してもらうのだが、お見舞いに来ることが楽しみになるような仕掛けづくりをすることによって、自然と家族の足が病院に向くような工夫をしている。 その1つが毎月開催される「ロビーコンサート」。病院というよりはホテルを思わせる明るい雰囲気のロビーには、毎回約60名の患者、家族が集まる。コンサートに合わせてお見舞いを計画する家族も多く、その日の病院は一段とにぎやかになる。取材当日は院内でひな祭りの行事があり、大正琴の演奏と演歌を聴きながら甘酒を飲み、1時間以上盛り上がった。職員の知人や地域のサークルなど、毎回嗜好の違うグループが演奏を担当する。人が人を呼び、演奏者を探すのに苦労することはないという。「何度も来てくれる方たちもいて、回を重ねるごとに腕が上がり、衣装も凝ってきたりして楽しみです」と看護部長の星野マスヨさんは嬉しそうに話す。香りと音楽とで演出された病院なら、家族も居心地がよく、病院で過ごす時間が苦にならないだろう。 ![]() 癒しの担い手、ボランティア 川崎田園都市病院では、定期的に美容マッサージやメイク教室なども開かれる。誰の肌にも合うように無添加、かつ簡単に落とせる化粧品を用いてお化粧し、きれいになったところで写真撮影をする。入院患者さんは女性が多いため、この種のサービスは大変な人気で、食堂や談話室は花が咲いたようになる。またお花を使ったフラワーワークも作業療法を兼ねて行われる。師範の資格のある人たちが講師となり、患者さんと生け花などを楽しむ。 アロマテラピー講座やロビーコンサート、メイク、フラワーワークなど院内に癒しをもたらす取り組みはすべてボランティアによるものである。それ以外にも屋上庭園の手入れをしてくれる園芸ボランティア、ミシンかけが得意な女性による縫製ボランティアなど、当院には多彩なボランティアがいる。 ボランティアが院内で活動することによって、病院には日常性や季節感がかもし出される。また職員では時間などの制約があってなかなか実現できない理想の部分をボランティアが担うことによって、患者さんへのサービスの幅が広がる。一方、ボランティアにとっても老人医療の現場で自分の持ち味を生かした活動ができ、人の役に立っているという喜びを味わうことができる。「ボランティアの方々のやりたいこと、得意なことを生かした活動をしてもらうためには受け入れ体制を整え、間口を広げておく必要がある」(椎名院長)。 ボランティアの心構えや病院とはどういうものなのかを理解してもらった上で活動してほしいと、学生や地域住民を対象とした「病院ボランティア実践講座」も開催している。また地域の高齢者を対象に、「老人医療勉強会」も開いている。病院が集約している健康や福祉に関する知識を地域に情報発信していき、地域に開かれた病院、地域に貢献する病院となるような取り組みを行っている。今後は、地域の高校生へのボランティア講座などを計画中だそうだ。「ボランティアの方のやりがいなどにも配慮したいので、専属のボランティア・コーディネーターが必要ですね」と星野看護部長は語る。 遊びりテーション 川崎田園都市病院では、通常のリハビリテーションだけでなく、遊びとリハビリテーションを組み合わせた、「遊びりテーション」を実施している。レクリエーション・インストラクターの野原智美さんは、「子どもじみた"遊びりテーション"では高齢者のプライドを傷つけるので、そのようなことのないよう配慮したプログラムを組んでいる」と語る。トーンチャイムとリトミックなどの「音楽療法」も毎週行われる。専門学校の講師を務める佐々木良江さんは3カ月に一度、3日間コースで病院で学生に実習をさせる。患者さんの気持ちをひきつけるにはどうしたらいいか、お年寄りの心についてなどを現場で体得させる。 できないことの理由を並べていても理想には近づかない。何がやりたいかが明確であれば、サポートしてくれる人は必ずいる。理想を現実にするためにはこういう医療がしたいという夢を具体的にもち、地域のさまざまな資源とつながることが重要なのだということを学んだ。 ![]() 川崎田園都市病院 神奈川県川崎市麻生区片平1782 TEL044−988−1118 http://www.otosiyori.com/ 2001年開設/305床
和田 ちひろ Wada Chihiro楽患ねっと理事長 慶應義塾大学文学部の頃より患者の視点からの医療サービスのあり方に興味を抱き、「おとぎの国の病院たち」(データーハウス)を出版する。同大学大学院政策・メディア研究科在学中から、本格的に理想の医療サービス実現のため研究・実践活動に従事する。杏林大学保健学部助手を経て、楽患ねっとを設立。スカイパーフェクTV(ケアネットTV)にて「選ばれるクリニック・そこが知りたい」の番組パーソナリティも務める。 http://www.rakkan.net |