| 医療・福祉経営の新時代と人財を創る「Visionと戦略」,保健・医療・福祉サービス研究会,2005.4 | |||
| 医療福祉経営最前線:質の高い高齢者ケアには欠くことのできない ボランティア、地域社会との融合 |
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川崎田園都市病院―神奈川県川崎市![]() 川崎田園都市病院は、昭和60年川崎市第1号の特例許可老人病院となった柿生病院を前身とする、川崎市有数の高齢者病院である。平成13年には現所在地に新築移転し、川崎田園都市病院と改称。「療養病棟」 と 「老人性痴呆疾患療養病棟」 で、地域の医療依存度の高い高齢者を支えている。この病院の基本理念は 「患者様お一人お一人を良く看る」。患者様中心主義をモットーに 「人生の大先輩であるお年寄りの方々が、暖かい家庭的な雰囲気の中で、安心して療養に専念できる病院」 を目指している。「日本病院ボランティア協会」 に加盟している施設、団体は180に及んでいる。「ボランティアは、ケアの向上にどのような貢献ができるのだろうか」。川崎田園都市病院の取り組みを紹介し、高齢者医療のあるべき姿、地域社会との関わりについて、もう一度見直してみたい。 チームケア態勢と検査・予防の徹底 邊見院長は、椎名前院長の逝去により、平成16年11月院長に就任した。病院の特長の第一は 「すべては患者様のために」、第二は 「どのようなことにでも素早く対応」 だと語る。そして病院の取り組みと将来展望について、次のように答えてくれた。 「当院には、しっかりとした医療と看護があるということで、患者様とご家族が安心してくださっているのだと思います。当院の痴呆病棟では、内科医と精神科医が二人一組で対応しています。認知症(痴呆)は精神科の専門医が診断しますが、この患者様の多くは内科的な疾患も抱えています。内科医師の比重が、かなり高くなります。家族の皆様に『安心だ』と言われているのは、このような二人の医師による協同治療という態勢を、正当に評価いただいているものと考えています」。 また3カ月に一度、入院患者様に定期検査を実施しているという。「ある程度、採算を度外視しても診療を充実させたいのです。もちろん予防はリスクを減らす結果に繋がります。介護療養型の病院のなかで、当院を選んでいただいていた理由として 『患者様に優しい』 『開かれた病院』、『ボランティアを含めてケアの態勢が整っている』『院内が清潔で明るい』 等があげられています。しかし私たちが求めていることは、最終的には患者様の笑顔です。医者として医療を提供するということが基本にある以上、介護型であっても質の高い医療をめざすのは当然のことだと思っています」。 平均要介護度4.7以上という患者特性 また介護施設との連携は近隣の診療所に任せ、川崎田園都市病院では、重篤な方の入院の受け入れを主に担っているという。「病診連携はしっかりと取っています。当院は予約入院が多く、ほぼ常に満床の状態ですが、診療所の先生から紹介を受けた場合は、できるだけ便宜を図っています。また重症の方をできるだけ引き受けているというのも、当院の大きな特長です。入院患者様の平均要介護度は、実に4.7以上。在宅での療養生活が困難な方々です。さらに同じ要介護度4でも、自分で摂食できないような高齢者が数多く集まってきているという。「必要な費用、マンパワーも増加しますが、当院が受け皿とならざるを得ないのです。私たちの果たすべき役割と認識しています」。
教科書通りに行かないのが高齢者医療 院長は、「その方の人生に残された最後の時期に 『如何に人間的な生活ができるか』 ということが最も大事だ」と語る。「入院されている高齢者の方々は、それこそ日本をここまで作ってきた功労者です。その方々のために少しでもお役に立ちたいというのが、私たちの希望です」。 「また3カ月に一度は、ご家族の方に来院していただき病状説明を行っています。これは変化があっても、なくても必ず実施します。ここでもカルテや検査データなど、すべての情報をお見せしています。インフォームドコンセントとして、またお見舞いを促す効果もありますが、ご家族の方とコミュニケーションを取っておくことは重要だからです。確かに300人もの入院患者様のご家族すべてに実施するのですから、私たちとしてもかなり大変です。しかし高齢者は、状態が急変することがあります。このような場合に起きがちなトラブルを未然に防ぐ意味からも、私たちは日頃からの交流と信頼関係の構築に労を厭わないのです。面会回数や時間が増えることに繋がり、患者様のメンタル面にも良い影響が出ます。地域社会との距離も縮まります。これらすべてが、将来的な経営の基盤作りでもあるのです」。 看護部長が、話を受けて続ける。「これまでも行政の施策には早め早めに手を打ってきました。介護保険の始まる2、3年前から職員を研修会などに派遣して、準備を進めてきたのです。当院の病床は、すべて介護保険対応です。医療型とミックスされている病院も多いようですが、当院では介護保険対応に統一した方が良いと考えました。また新しい制度が始まるときに、すでに態勢ができているということは、優れた人材の採用にも繋がります」。
ケアの態勢について、看護部長が説明する。「当院では、当直の医師が、嫌な顔ひとつせず飛び起きて駆けつけてくれます。朝と夜の回診もじっくり時間をかけ、24時間途切れないサービスを実現できていると思っています。それが当たり前のこととして根付いていますから、私たち看護師も安心できるのです」。 「患者様のカルテには、医師、看護師、セラピスト、レクリエーションワーカー、検査、薬剤、栄養に至るまで、すべての情報がまとめられます。一冊のカルテに、それぞれの職種の記入する欄が決められており、時系列的に各自が書き込んでいきます。時系列ですので『昨日どのような状態だったか』 『昨晩と今朝で何か変わったか』 など、誰が見ても一目際然です。これを見ればその患者様のすべてが分かります」。 職員への対応については、院長が次のように語ってくれた。「余裕がなくなると、しっかりとしたサービスができなくなります。働いている職員が 『如何に働きやすいか』 ということが最も重要です。働きやすければ心に余裕が生じ、良い看護・介護ができるのです。配置する人数にも、ある程度の余裕を持たせることが必要です。ギリギリでやっていると負担が増え、リスクも増加し、何よりも働く場としての魅力が欠落してしまいます」。 看護部長が続ける。「院内調査委員会では定期的に、患者様と職員の満足度をアンケート調査しています。結果はロビーに貼りだし、皆様に閲覧してもらっています。職員満足度調査では 『親を入院させたいですか』 『有給が取りやすいですか』 『上司は話しやすいですか』 などの項目を設定し、あまり満足度が高くない部署から重点的に改善しています。また看護体制に影響が出ないよう、看護師には外部研修に積極的に出ていく機会を増やし、院外でしっかりと学び、それをレポートとしてまとめ、病棟カンファレンス等で発表してもらいます。学んだ知識を自分のものにするだけではなく、院内に還元しなければいけないので、本人も相当真剣に取り組まざるを得ません」。レクリエーションから入っていったボランティア 地域に貢献する病院として地域コミュニティとの連携を深め、また同時にサービス向上を実現する 「病院ボランティア」 が注目を浴びている。一方で受け入れたものの、十分に活用しきれていないケースも多いようだ。受け入れの経緯について話が進んだ。「ロビーコンサートでもそうですが、他の病院に先駆けて 『遊びリテーション』 を組み入れ、本格的に取り組んできたという歴史があります。見学に来られる病院関係者もおられますし、発表の場として当院を使いたいというボランティアからの問い合わせも多数あります」。 はじめは、「患者様のために何かできないか」 ということで、レクリエーションワーカーを募集するところから始めたという。「13年くらい前のことです。その時に、ボランティアで良かったらやりましょうと言ってくださる方がいたのです。そして 『遊びリテーション』 ということを始めるようになりました。当院のボランティアの特長は、庭の清掃や患者様の誘導ではなく、レクリエーションから入っていったということです。現在の 『かわでんボランティアの会』でも、ほとんどの皆様に音楽や動きのフィールドで活動していただいています。企画もたくさん出してくださいます。またコンスタントに来ていただける方は、リタイアされた方が多いのですが、現役社会人の方、医療系の学校に通っている学生の方もおられます。遠距離ということでは、長野県の安曇野から毎月1回、誕生日会のお手伝いに来てくれる方がいます」。 「地域社会との交流ということでは、花見の時期に近隣の高校からお誘いがあり、患者様と一緒に桜を見に行きます。そのような交流の結果、吹奏楽部と合唱部の合同演奏を、当院ホールで聞かせていただくようになりました。『去年より上手になった』 などと、ねぎらう患者様もいます。高校生にとっても、当院にとっても、この交流は良い結果をもたらしています。彼らは本当に行儀の良い若者として、私たちに接してくれます」。 ただ任せるだけではないボランティア活動
活動の詳細については、ボランティア・コーディネーターの大迫さんが引き継いでくれた。「昨年1月から、私がコーディネート担当になったのですが、ボランティアの方にも、職員にも、ボランティア活動に対する共通認識の土壌がありますので、やりやすい環境です。おかげさまで、ロビーコンサートのご出演希望の申し出は数多くいただいており、現在1年後までスケジュールが決まっています。良いプログラムを行うと、レベルの高い演奏者の方が集まってくるという好循環が生まれています。また数カ月、十数回にわたる準備・打合せ段階では、『高齢の患者様が聞きやすいテンポに編曲していただく、プログラムの一部に童謡などの聞き慣れた曲を入れていただく』 などのお願いを申し上げています。失礼を承知で、受け入れ側のコーディネーターとして意見をさせていただき、時には細かな要求もせざるを得ないのです」。 さらにきめ細やかな対応を心がけていると語る。「コンサート中は、職員は皆、担当の患者様に付きっきりになります。当然、異なるプログラムのイベントを同時に実施することはできません。ロビーコンサートの後、日を改めて、病棟でサロン・ミニコンサートをしていただくこともあります。また患者様のご希望には、できるだけ沿うようにプログラムを編成しますが、重篤な身体機能障害や重度の認知症の患者様は自分の意思を伝えることが難しいため、私たちもすべてのニーズを把握できているわけではありません。一般的なボランティア活動との遣い、難しさはここにあります。また患者様のご家族の方にもできるだけご来院いただき、活動を紹介するため「ボランティア便り」 を毎月発行し、専用ホームページでも公開しています」。 本物であることが感動を呼ぶ 「病院ボランティアというと職員の業務の補助というケースが多いように思いますが、当院では 『ボランティアの皆様の持っている能力や技術を、そのまま提供していただく』 ことに重点を置いています。院外から来ていただいて、本物の一端を披露していただくことが重要なのです。素人である職員ではなく 『プロが、何かを教えてくれる』、言い換えると 『非日常がある』 ということにおいて、患者様の満足度も高くなっているのだと感じています。日本舞踊は名取りの方に来ていただいたのですが、若い頃ご自分でされていたという患者様もいます。また、ピアノを教えていたという方は、かつてのご自分を重ね合わせて、目を爛々と輝かせます。感動のあまり涙ぐむ方もおられるのです。このような姿を拝見すると、コーディネーターもお役に立っているのだなと感じることができます。もちろんボランティアの方も、人生の大先輩であるお年寄りの経験を聞いたり、学んだりということで、決して一方通行のコミュニケーションにはなっていません。患者様から感謝される喜びもあるのでしょうが、それとともに、ボランティアの皆様にとっても、新たな発見を得るという、やりがいを感じていただいています。また当院では、ボランティアの方に 『自分のできることを、できる範囲で、できる時に』 とお願いしています。皆様の主体性をもった活動を支援していくことも重要と考えています」。 コンサートを見学させていただいて、患者様の反応が千差万別であることに気づいた。うっとりとした表情、にこやかな笑い、真剣な眼差し、リズムをとる体の動き、あちこちで漏れ出す声。拍手のできない患者様は、車いすを手のひらで打って感動を表す。そして無反応と思われる患者様も、体の震えや眼球の動きで、それと分かるという。病棟に帰った後から、症状に好ましい変化が起きる場合もある。これらを演奏家の方に伝えフォローするのも、コーディネーターに託された重要な役割だと知った。加えて長続きの秘訣が、何事にも誠実に対応している、この病院全体の良心に集約されているであろうことも。 (文/佐藤昌俊・写真/大仲宏忠) 川崎田園都市病院 ◆lnformation 〒215−0023 神奈川県川崎市麻生区片平1782 TEL.044−988−1118 FAX.044−988−0009 http://www.otosiyori.com/ http://www.e-volunteers.net (ボランティア専用のホームページ) 診療科:内科、リハビリテーション科、精神科(老人性痴呆疾患) 病床数=305床(介護保険対応) 介護保険対応療養病床194床、老人性痴呆疾患療養病棟111床 職員数:約280名 |